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農地を再び 厚木の農業が危ない(2)

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神奈川県厚木市

◆農業に新たな風を
農業の担い手不足や耕作放棄地の増加が問題視される中、市内には夢や志を持って、農業に参入する者たちがいる。独自の発想を取り入れた彼らの営みが、農業に新たな風を吹き込んでいる。

◯有機野菜で消費者を笑顔に
朝の冷気が立ち込める畑で黙々と野菜を収穫する男性がいる。
鈴木貴さん(38・中荻野)。
4年前に会社員から農家に転身した「新規就農者」だ。耕作放棄地を借り受け、化学肥料や農薬を一切使わない有機野菜を育てている。

●旬な野菜を食卓へ
「おいしい野菜を届けたい」。そう言って笑顔を浮かべる鈴木さんが農業を始めたのは、平成23年の東日本大震災がきっかけだ。自然の力の前になすすべがなく、無力感に襲われる中、生きる上で欠かせない「食」を支える農家の仕事に深く感銘を受けたという。未経験ではあったものの、これをきっかけに農家への転職を決めた。
注目したのは、研修先の先輩農家から教わった有機農法。落ち葉や家畜のふんなど、地域で出た資源を有効活用して種から育てるという昔ながらの農法が、野菜本来の甘さや風味を引き出すということに、奥深さを感じている。
鈴木さんは手塩にかけて育てた野菜を、注文を受けたお宅に自ら届けている。野菜の出来を直接説明する傍ら、消費者の率直な感想や意見を聴くためだ。「あの野菜が食べてみたい」「この時期はもっと葉物があると助かるな」。そんな消費者の声にどれだけ応えられるか―。消費者の喜ぶ姿を思い浮かべながら野菜づくりに励んでいる。
・自分の力を地域に還元したい
鈴木さんが耕す農地は、市と市農業委員会、JAあつぎが共同で開設する都市農業支援センターからの仲介で借り受けた耕作放棄地だった。長年、人の手が入っていない荒地は、土壌が悪く安定した野菜の収穫が難しい。鈴木さんは土壌の問題や害虫・鳥獣被害などの課題がある中、試行錯誤を繰り返してここまで野菜を作り続けてきた。その結果、現在は農地を4カ所1.5ヘクタールまで拡大。年間60種の野菜を栽培している。「熱心に農業へ打ち込む姿は地域でも評判」と話すのはセンター長の井萱(いがや)諭(さとし)さん。「鈴木さんの働きぶりを見て新規就農者に土地を貸したいという声が増えている」と周囲の変化を語る。
「農業の危機が叫ばれている今だからこそ、新たに参入した自分の力で農業の可能性にチャレンジしたい」と意気込みを語る鈴木さん。「地域の資源で作った野菜で地域の人の食を支える農業を根付かせていくことで自分のように就農を希望する人たちの力になりたい」。そう続け前を向いたまなざしは、真っすぐと将来を見据え
ている。

◯農業体験でまちおこしを
「大きくなったね」「もう少しで採れるかな」。農園から収穫の時を待ちわびる声が聞こえてくる。ここは、野菜の作付けから収穫までが体験できる「飯山農楽校(のらっこ)(以下農楽校)」。平成28年3月に開校された、耕作放棄地を活用した滞在型体験農園だ。

●飯山の特長を生かして
農楽校は、農業体験を通じて地域に人を呼び込み、活性化させる取り組みとして始まった。担い手不足などで地域に荒廃農地が目立ち始める中、土地の活用が進まない状況を危惧し、兼業農家の渡辺一夫さん( 74・飯山)を中心に周辺農家が一念発起。集まった10人のボランティアで野菜づくりの指導に当たっている。市やJAあつぎではこの活動に注目し、農業が抱える問題解決への糸口として支援を進めている。
農園は現在、市内を中心に20代の家族連れから80代の定年退職者まで幅広い層の18組が利用。3月から翌年の1月までジャガイモや落花生、キャベツなど、約20種類の野菜を栽培している。収穫祭や交流会など年に数回開かれるイベントも好評で、利用者同士の交流の場となっている。最大の特長は、年に一度、地元飯山温泉
の旅館に一泊し体験農園が楽しめること。「他にはない飯山の魅力を取り入れたらどうか」という発想から実現したもので利用者からも評判だ。
●まちおこしに一筋の光
体験農園は、野菜を自分の手で楽しみながら育てられる点が良いところ。家族で参加する前田宏章さん(36・緑ケ丘)は「自分たちで作る野菜の味は格別。息子は農楽校をきっかけに野菜が好きになった」と笑顔で話す。
渡辺さんは「利用者に地域への愛着を持ってもらえたらうれしい。いずれは農楽校を運営する仲間として一緒に活動できたら」と夢を語る。農業に興味を持つ人たちが外から集まり交流を深め、地域を活性化させる―。理想をかなえるため、農楽校の挑戦は続く。

農業を取り巻く環境は年々厳しさを増している。しかしこうした「厚木の農業を盛り上げたい」と農業に新たに参入しようとする者たちの熱い思いは、農業再生への布石になるかもしれない。

◯3月10日新年度開校
野菜を育ててみませんか
参加者募集
場所:飯山4094 区画 40区画(30平方メートル)
料金:年間3万7000円(種苗・肥料、農機具代、温泉旅館1泊朝食付きの宿泊代含む)作付け ジャガイモ、キャベツ、ハクサイ、トマト、ナス、キュウリなど
利用期間:3月~平成31年1月
申込み:電話またはファクスで飯山農楽校・渡辺【電話】090-1843-1117
・【FAX】241-3295へ。

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