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広報あつぎ 第1306号(2019年7月1日発行)

あつぎ起業スクールから踏み出す夢への一歩(1)

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神奈川県厚木市

「自分の店を持ちたい」「独立したい」―。起業の夢を持つ人を後押しするため、市が開講する起業スクール。動機や業種は違っても、同じ目標を持つ人々が集まる場は、熱いエネルギーに満ちている。受講をきっかけに、夢への一歩を踏み出した人たちを追った。
あつぎ元気Wave:7/1〜CATVで放送

■姉妹で夢見たスープカレー店
「いらっしゃいませ」。旭町の路地の一角、真新しい店内に姉妹二人の声が響く。足を踏み入れると、香辛料の香りが鼻をくすぐる。「こちらへどうぞ」と席に案内するのは、妹の花井恵さん(28・長谷)。厨房では注文を受けた姉の友美さん(35)が手際よく調理し、料理を盛り付けていく。二人の夢だった店は今日、開店を迎えたばかりだ。

▽夢を現実にする手掛かり
「大好きなバリ島の料理を使った店を厚木に開きたい」。20代の頃、バリ島の旅行会社で働いていた友美さんは、ウコンやショウガなど約20種類をすり潰したバリの調味料を使ってスープカレーの店ができないかと、起業の夢を抱いていた。帰国後、事務職として働きながら、材料を仕入れる方法や資金集めに考えを巡らせていた。開店に向けて何から始めればいいのか悩んでいた時、同僚に紹介されたのが、起業に必要なノウハウが学べる「あつぎ起業スクール」だった。「何も分からない自分にぴったりだ」。友美さんは、共に店を開く夢を語っていた恵さんを誘い、二人での受講を決めた。

▽一つずつ壁を乗り越える
受講して見えてきたのは、利益計画や資金調達、顧客獲得など、挙げれば切りがないほどの課題だった。圧倒された友美さんだったが、講義を受け、創業計画を作ると、何から手を付ければ良いのか次第に見えてきた。「不安もあるけど、今やらなきゃ絶対に後悔する」と自分を奮い立たせ、卒業後すぐに開店に向けて奔走。スクールで教わった猪熊正美先生には、店を出す場所や一日に必要な売り上げなど、何度も相談してアドバイスをもらった。
経営面の課題をクリアしていく傍ら、味にも改良を重ねた。バリに渡って料理教室を開く日本人を訪ね、香辛料の調合を改めて学び、帰国後、起業スクールの先輩と講師の協力で試食会も開いた。試食会に参加したのは講師の友人や仕事仲間。厳しい意見もあったが、「商売として提供するのだから乗り越えなければ」と、試作を繰り返した。
店舗では着々と工事が進む中、友美さんは日に日に不安を募らせていった。「お客さんは来るだろうか」「自分にやっていけるだろうか」。そんな姉の姿を見て恵さんは「一人では思い付かないことも、二人だと気付ける。一緒に乗り越えていけばいい」と、チラシの配布やメニューの作成、インターネットを使った宣伝などに力を注いだ。

▽迎えた開店初日
開店初日は多くの人が店を訪れた。工事中から楽しみにしていたという近所に住む女性や、店頭の貼り紙を見て来店した会社員の男性など、昼時は大半の席が埋まり、にぎやかな開店となった。
手伝いに来ていた家族や友人も帰り、二人だけになった店内は静けさを取り戻す。友美さんは明日の仕込みをしながら「これからが大変だろうけど、二人で楽しくやっていきたい」と笑った。起業スクールをきっかけに、夢の実現に向け歩き出した二人。ここからが、本当の始まりだ。

■丁寧な仕事で信頼を積み上げる
「ここは大杼(だいじょ)というつぼです。刺していきますよ」。慣れた手つきで針を持ち、一瞬でつぼを突き止める。丁寧に、素早く、まるで肌に吸い込まれるように、細い針を刺していく。旭町に開院して三年目になる鍼灸(しんきゅう)師の佐藤武さん(53・七沢)も、起業スクール卒業生の一人だ。
きっかけは、41歳の時に病気で視力が大幅に低下し、長年勤めた会社を辞めたことだった。転職は難しいと思い、鍼灸師を志した佐藤さん。平塚市の職業訓練校で学び、修行を経て、はり・きゅうや指圧、マッサージなどの技術を身に付け、50歳で国家資格を取得した。開院を決めた時、融資や経理を学ぶために起業スクールを受講した。「強い気持ちとやる気を持って受けたからこそ、得られるものも多かった」と、佐藤さんは当時を振り返る。

▽ゼロからのスタート
開院して間もない頃は、ほとんど患者が来ず、赤字続きだった。辛い日々が続いたが、それでも患者一人一人に誠実に向き合い、丁寧に施術した。次第に口コミで評判が広がると、繰り返し来てくれる人が増え、スクールで学んだリピーターの重要性を実感した。「信頼してもらえたのは、誠実に対応した結果。どんな仕事でも、自分にしかない『何か』で人の心を掴めるかが、大事なことだと思う」と、佐藤さんは言う。開店から10カ月で、経営は黒字に変わり、今では患者の約9割がリピーターだ。

▽日々が喜び
休日は勉強会に出たり、専門書の音声を聞いたりと、常に学び続け技術の向上を目指している佐藤さん。楽な毎日ではないが「今では、日々が喜び」と笑顔を見せる。待合室には、患者が持って来て、世話もしてくれているたくさんの鉢植えが並ぶ。鮮やかに咲く花々は、患者と佐藤さんの信頼の証しだ。新たな挑戦をしたからこそ、得られる喜びがある。夢をかなえるために一歩を踏み出す人の力は、これからも活気あるまちを作っていく。

問合せ:産業振興課
【電話】225-2832

〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2-21-11 山竹ビル