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広報あつぎ 第1316号(2019年12月1日発行)

特集 無意識の偏見 普通って何だろう(4)

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神奈川県厚木市

▽変わる風向き
髙梨さんがディスレクシアの診断を受けたのは、秦野養護学校の中学部3年生の時。「障がいと分かって、気持ちがすっきりした。努力が足りないと思っていたし、そう言われたこともある。工夫次第で、補えることもあると考えられるようになった」。
ドローンでの活躍が始まったのも、ちょうどその頃だった。2年生の時、インターネットの動画で見つけたドローンに興味を持った髙梨さん。家族に相談して海外から機体や部品を購入し、近所の空き地などで飛ばしていた。「ラジコンのヘリを飛ばしていたので、操縦に難しさは感じなかった。上空からの映像を見ながら飛ばすのはウキウキした」。ドローンレースの存在を知り、出場を始めて3カ月後、3回目のレースで髙梨さんは優勝。国際大会に日本代表として招待された。人と関わることが苦手だった髙梨さん。レースや練習会場では、周りに自然と人が集まり、言葉を交わすようになっていった。3年生になり、高校進学を望んでいた髙梨さんに新しい出会いがあった。担任の薦めで相談に行った東京大学先端科学技術センター。障がいがある人の進学・就労支援などに取り組む、DO-IT Japan(ドゥーイットジャパン)(下部参照、以下DO-IT)の情報提供を受け、高校受験に臨んだ。試験の前には、DO-ITの助言を受け、障がいの診断書に加え、学校や家で実践してきた読み上げの経歴を学校に伝え、代読などの代替手段の許可を得て合格を果たした。入学後は音声教材を使い、パソコンの利用やテストデータの電子化などの配慮を受け学校生活を送った。「DO-ITに参加して、自分の苦手なことをどう補えば目標を実現できるか考えて実行できるようになった」と髙梨さんは振り返る。

▽視界の先にあるもの
高校卒業と同時に、髙梨さんはドローンを使った撮影などの会社を起業した。父の浩昭さんは、経理や価格の交渉、撮影補助などを担うため、勤めていた会社を辞めた。「決断が必要だったけれど、軌道に乗るまでは自分がサポートしようと決めた」と、仕事、レースに同行している。
髙梨さんは今年6月、人物に密着する民放のテレビ番組に出演した。幼少期に関わった竹居田さん、冨岡先生には、母の朱実さんから「見てほしい」と知らせがあった。番組を見た冨岡先生は「家族をはじめ多くの人が彼の良い所を見て関わってくれた。人に恵まれた」と目を細めた。竹居田さんは「本当にたくましくなっていた。うつむく姿も見ていたから。うれしいです」と声を詰まらせた。
ドローンで活躍の幅を広げる髙梨さん。今も見据えている夢は、ドクターヘリのパイロットだ。中学生の頃、身近な人の見舞いで通った大学病院で目にしたドクターヘリへの憧れは今も変わらない。「同じ障がいがあっても免許を取った人が海外にいるから、できないはずはない。今やるべきことを積み重ねます」。澄んだ青空のような笑顔で話す髙梨さんの視界は、ドローンが映し出す映像のように、遠く先まで開けている。

■他者への想像力がある社会に
東京大学先端科学技術センター人間支援工学分野准教授DO-IT Japanディレクター 近藤武夫さん(43)
DO-IT Japanは、障がいのある子どもたちが、夢に向かう過程で直面する社会的障壁を共に乗り越える活動をしています。大切にしているのは、子どもたちの自己決定と自己権利擁護です。私たちが促すのではなく、本人がやりたい事を決め、実現のために必要な配慮や支援を自ら求めていく。そこに、合理的配慮に欠ける障壁があるのなら、一緒に考えクリアしていくことが、社会全体の変革にもつながると信じています。
以前は、平等という言葉の下に、試験は同じ条件で受けるのが当たり前で、問題の音声読み上げや、時間延長などは認められませんでした。しかし、それでは障がいがある子どもたちの、試験への参加の平等が損なわれます。試験の本質は、問題の内容を理解する力と、解答できる知識があるかを測ること。参加の手法は、合理的配慮として多様であるべきです。
2016年4月に、障害者差別解消法がスタートし、法的にも合理的配慮が求められるようになりました。誰もが生きやすい社会の実現には、他者と接するとき、自分の価値観だけで相手を見ずに、想像力を働かせることが必要です。合理的配慮は、想像力から生まれます。多様な価値観に触れ、それを許容する寛容さが社会全体に求められているのではないでしょうか。

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